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一九九七年一月以降六月まで、基本問題部会はこれらの論点を一〇回にわたり論議を行い、その審議結果を「保険業の在り方の見直しについて」としてとりまとめ、六月十三日に保険審議会はそれを承認し、保険審議会報告として大蔵大臣に提出しました。
保険審議会に加えて、金融制度調査会、証券取引審議会も、金融ビッグバンの具体的な改革案を、同じく六月十三日に各報告書として、大蔵大臣に提出しましたが、こうした一連の改革案が、金融システム改革法案として一九九八年の通常国会に提出され、六月に可決・成立しました。
損害保険のビッグバンの説明をする前に、それと極めて関連の深い一九九六年に施行された保険業法の改正について、その内容を見ていきましょう。
当時、業法改正は、保険制度改革と呼ばれ、①規制緩和・自由化の推進、②保険業の健全性の維持、③公正な事業運営の確保、の三つが柱であるとされていました。
なかでも、規制緩和・自由化の推進は主要な柱の一つでしたが、あくまでも、ステップーバイーステップの段階的・漸進的な規制緩和・自由化を目指したものだったといえます。
・生損保相互参入一九九六年改正前保険業法(本節では旧業法といいます)においては、保険事業についての明確な定義はありませんでしたが、新保険業法では、保険事業を生命保険固有分野、損害保険固有分野、第三分野おのおのについて規定し、生命保険会社は生命保険固有分野と第三分野の保険を、損害保険会社は損害保険固有分野と第三分野の保険を行うものとされました。
生命保険固有分野、損害保険固有分野を同一の保険会社が行っては行けないという生損保兼営禁止の規定が維持される一方、新保険業法によって初めて、子会社方式による生損保相互乗り入れが認められました。
すなわち、生命保険会社は損害保険会社の五〇%超の株式を、損害保険会社は生命保険会社の五〇%超の株式をそれぞれ取得できることが規定されました。
さらに、親会社が子会社の業務・事務の一部を代理・代行できることになりました。
これによって、損害保険会社一一社が生命保険子会社を、生命保険会社六社が損害保険子会社を設立し、一九九六年十月から営業をスタートしています。
生損保相互参入が損害保険会社および消費者に与える効果としては、次の二つが考えられます。
第一は競争主体の増加による市場の活性化です。
損害保険、生命保険おのおのの市場に既存保険会社とは異なった文化を持った参入者が、新たな商品を投入するなど、競争が激しくなり、消費者の選択肢の増大が期待されます。
また、親会社による業務の代理・事務の代行が認められていますから、消費者は損害保険会社一社を通じ、損害保険、生命保険両方の商品を購入することができ、消費者の利便性の向上も、大きなメリットになります。
第二は、損害保険会社にとって、経営資源の有効活用に資するということです。
従来は、損害保険事業にしか使えていなかった経営資源が、生損保両事業で使えるわけですから、経営の効率化にも大きく資することになります。
なお、一九九二年の保険審議会答申では、銀行、信託、証券と保険との子会社方式による相互参入の考え方が盛り込まれていましたが、一九九六年の改正では見送られました。
・商品・料率についての一部届出制導入旧業法下では、保険商品・料率について、契約者保護を図るという理由で、基本的には主務官庁の認可が必要とされ、事前認可制となっていました。
損害保険会社による商品開発の多様化を図るため、手続きの弾力化・迅速化を目指して、一部の商品に行政当局による変更命令権付の届出制が導入されました。
ただし、届出制の対象となるのは保険契約者の保護に欠ける恐れの少ないものに限られることとされ、企業分野の一部の保険商品のみに届出制が導入されました。
保険ブローカー制度の導入業法改正によって、保険ブローカー制度が導入されました。
純率算定会制度業法改正では、算定会制度についても見直しの対象になりました。
一九九二年保険審議会答申では、「今後の料率算定の枠組みとしては、対象とする保険種目全てについて営業保険料率を算定するという現行制度を見直し、状況の変化に対応して、問題の生じるおそれが少なくなったものについて、純保険料率部分のみに遵守義務を課し、付加保険料率部分はアドバイザリーレートとして提示することもできる制度を導入することが適当である」という方向性を出しました。
付加保険料率部分は、損害保険会社の経費等に充てる部分であるので、使用義務を外しアドバイザリーレートに移行することによって、競争原理を導入しつつも、純保険料率部分については使用義務、すなわち価格カルテルの存在意義を認めたわけです。
これが純率算定会制度です。
純率算定会制度の対象種目も、契約者保護のために支障が生じることの無いと認められる一定の種目に限るものとされ、実際に純率算定会制度が導入されたのは、当初は火災保険のうちの大口物件だけであり、そこから、段階的に拡大されることになっていました。
ソルベンシー・マージン基準の導入銀行・証券等では経営の健全性を計る指標として自己資本比率がすでに導入されていますが、保険会社については、諸外国の例を参考に、一四八ページに記載したソルペンシー・マージン基準が導入されました。
但し、ソルベンシー・マージン基準は、あくまでも保険会社の経営の健全性を、行政上の指標として把握するために導入されたものとして位置づけられ、各保険会社ごとの数字は公表されませんでした。
各保険会社が自発的に公表を始めたのは、一九九八年三月期決算からでした。
経営危機対応制度戦後わが国では、損害保険会社の破綻は、わずかに一九六八年にフィリピンのキャピタル社という損害保険会社の日本支店の破綻があるのみで、経営破綻が社会問題になるようなケースは幸い経験していません。
しかし、自由化・規制緩和は、損害保険会社間の競争を激化させ、バブル経済の崩壊、長引く景気の低迷とも相まって、今後もその状況が続くという保証はありません。
銀行には、預金保険機構がある一方、保険にはそれまで預金保険機構に相当する安全ネットが存在しませんでしたが、新業法施行に伴い保険契約者保護基金が創設されました
ディスクロージャーの整備銀行法にならって、保険業法にもディスクロージャーに関する規定が置かれました。
保険会社は、事業年度ごとに業務および財産の状況を説明する書類を本支店に備え置き、公衆の縦覧に供することになっています。
各損害保険会社は「○○社の現状」というような冊子を作成し、本支店に備え置いています。
一九四八年に料団法が施行され、損害保険料率算定会が設立されて以降、戦後のわが国の損害保険市場の根幹をなしてきた算定会制度ですが、業法改正に伴う料団法改正によって、一部の保険種目に純率算定会制度が導入され、さらに、一九九六年十二月の日米保険協議の合意によって、算定会料率の使用義務が全面的に廃止され、損害保険料率は自由化されることになったわけです。
その後、金融システム改革の具体案策定に向けて活動を開始した保険審議会は、損害保険料率の自由化に関しては、日米保険協議の合意内容をいわば与件とした方向しか出し得ず、一九九七年六月十三日の保険審議会報告「保険業の在り方の見直しについて」においては「算定会料率の遵守義務を廃止し、算定会が遵守義務のない標準約款及び参考料率を作成・算出する制度とすることが適当である」、「参考料率の算出・提供は、純率についてのみ行うことが適当である」と、結論づけています。
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